Facebook Global Partner Summit 2018 に行ってきた


ここ 3 年ほど Facebook Global Partner Summit に行っているが、今年も参加してきた。

2016 年は記事にしていなかった模様。

会場

これまではサンフランシスコで行われていた Global Partner Summit だが、今年は西海岸から東海岸に移してニューヨークでの開催だった。会場は Hammerstein Ballroom, America’s Got Talent の会場になる。

個人情報漏洩問題

まず最初に触れられたのは、やはりここのところ報道が続いている個人情報の漏洩問題についてだった。

これについては言葉を選びつつも Facebook としては最重点的に対応していることを説明してはいたが、正直、GPS 翌日にこういうのが報道されると、いくら真摯に対応していると言われてもその翌日に裏切られた気持ちになるといわざるを得ない。

Hackers accessed personal information of 30 million Facebook users

New York (CNN)Almost 30 million Facebook users’ phone numbers and email addresses were accessed by hackers in the biggest security breach in the company’s history, Facebook said Friday. The attackers accessed even more details on 14 million of those users, including the area where they live, their relationship status, their religion, and part of their search history.

気になった点

今回の発表で気になった点を気になった順に挙げるとだいたいこんな感じになる。

  • スクリプト機能の実装
  • App Review 詳細
  • Business Manager の階層構造化
  • Facebook Marketing Consultants
  • Hybrid web app SDK

スクリプト機能

今回の発表で一番の目玉はこれだろう。Google Ads Script を意識したとは思うが、GAS と似たようなスクリプト機能が Facebook でも導入される

Node.js ベースの実装なので、JavaScript で書くことができる。もちろん、外部 API との連携も可能なので、外部 API からデータを取ってきたり、逆に Slack に通知したりといったことが可能になると思われる。

Facebook Graph API / Marketing API へのアクセスは JS SDK を通して行われるので、機能が廃止されたり変更されたりしない限りは API のバージョンを意識しなくていいというのは大きいと思う。ただし、Insights 回りはバージョンごとの差異が大きいので、ここはバージョンアップごとに意識する必要はあるだろう。
また、スクリプトの実行は Facebook 側なので、実行環境を用意しなくていいのも大きい。スクリプトの編集は広告マネージャ経由とのことだが、API での編集もあり得るかも? とのこと。

リリースについてだが、β版は来年の早い時期とのこと。

App Review 詳細

次に気になるのは、やはり開発者なら誰でも気になるであろう App Review について。

App Review については何度か書いてきてはいるものの、いくつかの申請の結果からすると 審査基準は 2014 年の App Review 導入時の水準かそれ以上に厳しくなったと考えた方がいい。当時に書いた記事はこちらだが、スクリーンキャストの添付が必須になったりと色々変わってはいるものの、原則的にこちらに書いたことと大差はないと考えていいだろう。

なお、Ads に限っていうと Ads 固有のパーミッションの審査というのがついて回ってくる。サードパーティのツールを提供していればこの辺は App Review に出しやすいだろうが、例えば内部向けのツールを提供していると App Review はどうなるのかといった心配はあるだろう

セッション終了後、この辺の状況についてスピーカーと話をする機会があったが、結構好感触を得ることができた。個人情報取得系のパーミッションと違い、広告系のパーミッションは用途をいかに文章で説明できているかに依存するらしいので、サードパーティ向けツールを運用していなくても App Review をクリアできると思われる。

Business Manager の階層構造化

これまで、原則として 1 代理店 1 Business Manager として運用するケースがほとんどだったと思う。この場合、運用している広告アカウントのうちどれか一つでも悪い評価がつくと Business Manager に紐付くすべての広告アカウントの足を引っ張ることになっていた。また、広告主や他の広告代理店と広告アカウントやオーディエンス、プロダクトカタログを共有する際、データが紐付いている先が広告アカウントだったり Business Manager だったりして混乱の元となっていた。

今回、それへの回答として Business Manager の親子関係が導入された。

これにより、広告主または代理店ごとに子 Business Manager を切ることができる。これにより、ペナルティの局限化、各アセットの公開範囲の制限について単純化が可能となった。

Facebook Marketing Consultants

Facebook に限らず Google や Criteo も含め、広告をインハウス運用する場合は何かとつまづくポイントが多いと思う。Facebook の場合は Facebook Pixel のインストールからキャンペーン設計、SDK のインストールまたは計測ツールとの連携、Dynamic Ads を運用する場合はプロダクトカタログの設定など、広告運用に必要な知識の幅は非常に広い。
一方で、複数の広告主の広告を運用する代理店とは違い、インハウス運用の場合は運用機会も相対的に少なく、トラブルシューティングに非常に時間がかかってしまう。短期的には経験者を雇うことでクリアできるものの、当然知識がそこで止まってしまうので新しいフォーマットへの対応はどうしても遅れてしまう。

そういった広告主をサポートするコンサルを Facebook が認定する新たな制度として、Facebook Marketing Consultants が導入された。

FMC を取得するためには登録コンサルタント全員が所定の試験をクリアする必要があることから、Facebook Ads 固有の知識についてコンサル依頼する際にはいい指針になるかと思う。

なお、FMC は 2019 年 Q1 の早い時期にまずアメリカと西ヨーロッパから展開され、日本への展開はその後になるとのこと。時期も未定なのでしばらくは様子見する必要があるだろう。また、FMC はあくまでも FMP のサブセットなので、すでに Marketing Partner 認定を取っている場合はそこまで意識する必要はないかと思う。

  • Hybrid web app SDK
  • 最後に、Hybrid web app SDK について。特に EC などのネイティブアプリの場合、既存の Web サイトとの管理コストを考えて、いわゆるガワアプリ、見た目はネイティブアプリだが実際はアプリ内ブラウザでスマートフォン向け Web サイトを開くだけに近いアプリを運用しているパターンは多いと思う。

    このケースの問題点は、広告に必要なイベントを Facebook に正しく送信できないことにある。Facebook Pixel の場合はブラウザで Facebook にログインしていることが大前提になるが、アプリ内ブラウザで Facebook にログインしているケースはほとんどないかと思う。
    一方で、Facebook SDK でイベントを送信するとこのログイン問題は解決できるが、SDK でのユーザ特定は Facebook へログインしているかではなく、iOS / Android が提供する広告用 ID ベース (iOS の場合は IDFA, Android の場合は Advertising ID) でユーザ特定される。

    これまで、ガワアプリで Facebook SDK による app events を実装する場合、

    • iOS の場合は画面遷移時にアプリ内ブラウザ外にフックして app events 送信
    • Android の場合は画面遷移時、アプリ内ブラウザを再呼び出しする前に app events を送信

    といった実装が必要になっていた。

    今回紹介された Hybrid web app SDK を実装することで、こういった手間を考えることなく app events を送信できるようになる。

    ただ、実際問題として、特に国内においては Facebook SDK を生で実装するケースはそこまでないのではないだろうか。ほぼ AppsFlyer なり Adjust なりの計測ツールをインストールして、計測ツールから Facebook にイベントを送るパターンがほとんどだと思う。そういう意味では、正直、あまりメリットを感じなかった。

    総括・感想など

    今回の目玉はやはりスクリプト機能の実装だろう。Google AdWords Script に続き、Facebook も Marketing Automation の一環として JavaScript の実装を打ち出してきたのは非常に興味深い。
    また、FMC の導入も、背景にうっすら見える Facebook Pixel やプロダクトカタログのセットアップなど、特に SMB が引っかかりそうな部分についての問題は日本国内外問わず共通なのだと改めて認識させられた。

    実際に参加してみて感じるのは、やはり Facebook Ads に関わる会社であれば、最低でも 1 〜 2 人は現地に行った方がいいとという点だろう。もちろん基本的な情報は配信でも得られるが、肝心なのは発表で感じた疑問などをその場のブースで質問できるということにある。もちろんパートナー担当者経由で質問を投げることはできるが、やはり発表者またはそのチームに直接聞けるメリットというのは大きいのではないだろうか。

    最後に、今回からイベントの前夜祭が別の会場で開かれることになった。こういう場だとどうしても日本人を含めぼっち気味になる人が出てくるが、そんな人の対策として人捜しビンゴが開催されたw

    幸い、自分もクリアすることができたが、何かとぼっち気味な海外勢としてはこういう試みは非常にありがたい。